玄米酵素

食改善を推奨する医師・医療従事者へのインタビュー

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植物性のホールフードが私たちの健康を守り、地球環境も救う。

鈴木形成外科 小児科 院長
鈴木 晴恵 先生

植物性のホールフードが私たちの健康を守り、地球環境も救う。

形成外科医として手術、レーザー治療は元より、美容皮膚科的療法を取り入れるなど、最先端の方法を用い、顔や体の悩み解決に取り組んでいる鈴木晴恵先生。近年はここに栄養療法が加わった。

クリニックの1階には、産地・製法にもこだわったオーガニック食材によるカフェ「CHOICE」があり、そこのオーナー&プロデューサーでもある。鈴木先生が栄養療法に行き着いた経緯やカフェ併設で意図するものなど、お話を伺った。

3.11の福島原発事故をきっかけに『チャイナ・スタディー』と出会う

関心がなかったわけではないのですが、以前は食や栄養の知識がありませんでした。しかし、2011年3月の東日本大震災による原発事故で、陸も海も汚染され、これから安全な食を得るにはどうしたらよいのだろう。そんな疑問から分子栄養学や酵素栄養学、マクロビオティックなどあらゆる角度から栄養について学んでいきました。そして出会ったのが、T・コリン・キャンベル先生の『チャイナ・スタディー』です。

『チャイナ・スタディー』は、中国で13万人を対象に食習慣や栄養に関して行った疫学調査を分析した本です。そこには、動物性食品を一切やめ、プラントベースホールフード(Plant Based Whole Foods=PBWF)、すなわち植物性の食べ物を極力精製加工しないで食べれば驚くほど健康になれる、高血圧や心臓病、糖尿病やがんまでもが改善すると書いてありました。

当時私は分子栄養学も学んでいて、「日本人女性は貧血が多く、肉を食べないとダメ」と教わっていました。実際私も、血液検査で鉄欠乏性貧血とわかり、ヘム鉄とビタミンB群のサプリメントをとっていました。立ちくらみはいつの間にか治っていたのですが、貯蔵鉄量を反映するフェリチン値が上がらない…。

そして、原発事故と同じ年の11月に、『チャイナ・スタディー』に登場した医師の一人、ジョン・マクドゥーガル先生の「リブインプログラム」を知り、参加しました。これは、10日間に亘り3食のPBWFの食事をとり、食と栄養、健康と病気に関する講義を受け、運動なども行うプログラムです。

この時、私が先生に鉄剤のサプリメントをとっていると話すと、先生は「何か症状があるのですか?」「症状がないのに、数値が上がらないから飲んでいるというのはナンセンス」だと。貧血はよくないが、鉄を体に入れ過ぎるのは危険で、毒性が強く、過剰になった場合は解毒が困難。植物性の鉄なら、過剰になったら腸での吸収率が下がるが、ヘム鉄(動物性)はどんどん吸収してしまう。それを聞き、直ちにやめました。

このプログラムに参加し、科学的データや多くの臨床経験に基づく講義を聴き、動物性食品の摂取は全く必要ないと確信しました。マクドゥーガル先生自身は、典型的なアメリカの食事で育ち、18歳で脳卒中を発症。今でも左脚に少し麻痺が残っていますが、医師になってからPBWFの食事で健康を取り戻し、息子さんたちとサーフィンを楽しむほどに回復しています。この事実は私にとって大きな気づきとなり、PBWFの食事に完全に切り替えるきっかけとなりました。

"ホール(全体)"がなぜ大切なのか。栄養素は体内で複雑に協働している

PBWFの食事とは、植物性の食べ物をできる限り自然の状態に近い形(ホールフード)でとるというもの。それがなぜ良いのか。例えば、リンゴが健康に良いとはよく聞くと思いますが、リンゴの何が良いかはご存知ですか。『WHOLE』という本に、キャンベル先生がそれを書いています。

研究チームがまず、リンゴのビタミンCの量を調べ、それと同量のビタミンCをサプリメントでとってみたが、リンゴと同様の効果は得られない。そこで、抗酸化力のある他の栄養素をリンゴからいくつも見つけていき、見つけたもの全部を足したサプリメントをとっても、リンゴの効果には全く及ばなかったというのです。

つまり、リンゴの抗酸化力は、リンゴ全体という背景がなければ効果を発揮しないということ。栄養のメカニズムはとても複雑で、体内でどのように使われるかは、一緒に摂取された栄養素次第なのです。

キャンベル先生は、今はホール(全体)≠捉えることを忘れている、と警鐘を鳴らしています。「全体」と相対するのが「リダクショニズム(細分主義、還元主義)」ですが、例えば、病気には一つの原因とそれを引き起こす一つのメカニズムがあり、それを解決するために一つの方法(薬など)を見いだそうという考え方があるが、それは全体を見失う考え方ではないか、と。

キャンベル先生は、全体(ホールフード)をとればいいので、サプリメントも不要だと言っています。ただ、問診や検査をして今のその人の状態を知り、ある期間この栄養素のサプリメントで補えば早く改善するという時には、私は処方しています。

サプリメントも使いようだと思います。誰かがあのサプリメントで良くなったから、私もとってみようと考えるのは間違いです。「玄米酵素」は全体をとるものなのでいいと思います。

検査の数値が標準値内でもさまざまなケースが存在する

クリニックには栄養外来もあり、分子栄養学の手法も取り入れています。例えば、血液検査をして数値が標準値以内ならば、人間ドックや内科ではそれでOKとなります。しかしここでは、基準値内の数値でも少なめなら何が足りていないかなど、栄養状態を診ていきます。分子栄養学的な血液検査の解析以外に、非侵襲または極めて低侵襲のさまざまな検査を行っています。

その一つ、指先から血液を一滴採って顕微鏡で見る方法を行っています。例えば、検査会社に出した血液データで赤血球の大きさに問題がないとされた貧血のケースでも、実際に顕微鏡で見ると、赤血球が小さい鉄欠乏性貧血と大球性のビタミンB12欠乏あるいは葉酸不足による貧血が混在している場合もあるのです。細胞膜が弱く、赤血球がフワっとなくなっていく(溶血している)赤血球もあります。ではその原因は何かと考察していくわけです。

この検査を「血液プロファイル」と名付けて行っています。10分ほどでできる検査で、患者さんも一緒に見るのですが、「さっきラーメンを食べてきたでしょ」などということも分かります。動物性のものをたくさん食べていると、血球同士がくっついている、ひどいと凝集していることもあります。そういう時は、クリニックの1階にあるカフェで「スムージーを飲んできたら」と勧めます。飲んで15分後にもう一度検査をすると、サラサラになっていたりします。

クリニックにカフェを併設、PBWFの料理を提供



1階のカフェは、2013年に開設し、「CHOICE」と名付けました。CHOICE, not chance, determines destiny. 運命を決定するのはチャンスではなくチョイス。何を選択するかは、とても大事だということです。

カフェでは、産地や製法にも気を配ったPBWFの食材を使った料理を提供。グルテンフリーで乳製品・卵などの動物性食材も一切使っていません。メニューには、オムライスやピザもあります。卵ではなく別の食材を卵のように仕立てています。ピザにも使用しているCHOICEオリジナルヴィーガンチーズは特に人気です。


湯葉を使い卵に見立てた「ふわふわたまご風オムライス」


グルテンフリーのピザ生地に、オリジナルのヴィーガンチーズをトッピング

クリニックはビルの2階にあって、このカフェを通って上がってくるのですが、食事にも関心をもってもらいたいという意図からです。このビルから少し歩いた所には、料理スタジオとフロマージュ(チーズ)工房もあります。料理教室は今お休みしているのですが、今後は栄養外来に来る方向けのパーソナルな食事指導を考えています。

PBWFの食事はしたいが、何から始めてよいのかわからない、PBWFの食事をしてはいるが、おいしく食べる方法を知りたい、というようにいろんなレベルの方がいるので、それを指導できるようなパーソナルメニューを今考えているところです。

難しく考えるのは無用、「自然」の中にパッケージ済み

PBWFの食事とは、何をどう食べたらいいかとよく聞かれるのですが、植物性で精製してない物を食べればいいだけなのです。とても簡単です。

私たちの体は、ほとんどがタンパク質でできていて、それは大事な栄養素ですが、エネルギーになるのは主に炭水化物です。炭水化物が足りない時は脂質をエネルギーに変え、それでも足りなければタンパク質を使っていく。大雑把にいえば、炭水化物80、脂質10、タンパク質10の割合で食べていればいいのです。といっても、この炭水化物は砂糖ではダメで、ホールフードの炭水化物です。

野菜や果物など、多種多様な植物性の物を丸ごと食べていれば、ほぼこの割合になっているので何を食べてもいい。砂糖は精製されているからダメですが、サトウキビならいいのです。サトウキビには、食物繊維やビタミン、ミネラル、ファイトケミカルなどたくさん入っています。糖分も多いですが、それをエネルギーに変えるための栄養素がパッケージされている。たくさん食べたから、エネルギーに変えるためのビタミンB群をとらなきゃ、などと考える必要はないのです。

エネルギーを多く必要とする方、例えばスポーツをしている方、育ち盛りのお子さんなどは、脂質の多いナッツなどの種子類や豆を食べるといいのです。PBWFの食生活に関しては、クリニックのホームページで「PBWF食生活スタートガイド」がダウンロードできますので、ぜひご活用ください。

全米の死因第3位は医療、「自ら健康を守る」意識を

『WHOLE』でキャンベル先生は、全米の死因第3位は「医療」だと書いています。薬物治療による副作用です。日本も同じではないかと思います。なぜそうなるのか。元をたどると、病気になったら安い医療費で医者が治してくれる、と他人頼みになっているからです。これをやめないといけない。

例えば、交通事故で大変な状態になったとなれば、100%保険で治療してほしいですよね。でも、日頃の食習慣が悪く、血糖値が上がり動脈硬化が進んだ。その結果、薬を飲むというのはその人のためにならないし、国の医療費をたくさん使うことになる。だから、生活習慣病の薬は保険ではなく、自費にすれば、健康についてみんなが本気で考えると思うのです。

キャンベル先生が『WHOLE』で、なぜPBWFが広まらないかの理由を書いています。一つは、先にお話した全体を見失ったリダクショニズム蔓延の問題。もう一つは、食品をはじめ、製薬、医療といった巨大産業がPBWFで健康になれるという事実を知らせないようにしているということ。

このままでは、私たちはどんどん危険な状況に追いやられていきます。ですから、私は自然栽培によるPBWFが健康への道であり、地球環境を救う唯一の方法であることをさまざまな角度から伝えていきたいと思います。


2021年11月にオープンした2店目「カフェプラネット」の店内。中2階は特に人気のスペース。



鈴木 晴恵(すずき はるえ)

1959年京都市生まれ。1984年高知医科大学医学部(現・国立高知大学医学部)卒業。京都大学医学部形成外科、大阪赤十字病院形成外科、冨士森形成外科、城北病院等を経て、2000年より鈴木形成外科(現・鈴木形成外科 小児科)院長。国内外学会での講演や医療専門書の執筆多数。あざ、しみ、脱毛などのレーザー治療と美容医療のパイオニア。眼瞼下垂症を始めとする手術にも定評がある。1990年に「メディカルエステ」を提唱し、実績を上げている。アンチエイジング治療の中心にPBWFの食事指導を据えている。