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食改善を推奨する医師・医療従事者へのインタビュー

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がん対策を入口に健康寿命をどう延ばすか。次々世代向けの教育を。

札幌がんセミナー理事長
小林 博 先生

がん対策を入口に健康寿命をどう延ばすか。次々世代向けの教育を。

がん研究一筋に60年。北海道大学名誉教授、(公財)札幌がんセミナー理事長として、様々な角度からがん対策に携わっている小林博氏。15年以上におよぶスリランカでの健康教育活動は高い評価を受け、保健文化賞にも輝いている。こうした教育活動や研究成果を著した著作も多数。
(はい!元氣らいふ2015年5・6月号より)

がんは長命には避けられないもの 要は、いかに健康に長く生きるか

 昨年の秋、『がんを「味方」にする生き方』という本を出版。「これからの時代、がんをどう捉え、どう立ち向かえばよいか」を模索した本です。

 がんとは、体の中に生まれた新しい生物。だから、がんの正式名称は「悪性新生物」です。規則正しく分裂する正常な細胞の中から、がん細胞が発生する。今の定説では、遺伝子に傷がつくから。では、なぜ傷がつくのか。生きている間に細胞は、体の内外からいろいろな影響を受ける。歳を取ることもその一つですが、遺伝子の傷のつき方が通常の老化とは異なり、がん化はちょっと違った場所の遺伝子がやられる。遺伝子はたくさんあるので、傷つく遺伝子の違いで肺がんになったり、大腸がんになったり…。だから、人間に限らず生物は、長生きすればするほど、寿命に達する前か後かは別にして、がんは生きた証拠として発生してくる。

 そう考えると、「がんを撲滅する」のではなく、がんにならないようにする、あるいは、細胞ががん化する時期をできるだけ遅らせればいいのではないか。また、病気はあまたあるから、がんだけを敵視するのはおかしい。がんと仲良くというのは少しオーバーだが、がんを叩くことばかりに一生懸命になって、がんは小さくなったが人間も死んでしまった、では意味がない。がんは敵だけど、身内から生まれたものだから、もう少し身内のものに対する対応の仕方を考えないと本当のがん対策にはならないだろうと僕は思います。

 人間の一生は、宇宙の広大な時間の流れから考えたら、ほんの一瞬。だからこそ、限られた人生を健康に楽しく生きることが大事。がん対策はもちろんですが、がんだけでなく、健康寿命をいかに延ばすか。それが今後の課題なのだと思います。

子どもが大人を変えていく! 小中学生向け「がん教育DVD」を作製

 僕がスリランカでの健康教育を始めてからもう15年以上。当時スリランカでは口腔がんが多発していると聞き、予防教育を始めたわけです。原因は昔から続く噛みたばこの習慣。この習慣さえ変えられれば、と改善教育を行ったもののダメで、思い立ったのが、子ども達への健康教育。小中学校で、たばこの害やがん予防、健康の大切さについて繰り返し教え、子ども達も熱心に学んだ結果、子どもが親を説得するまでになった。やがてその効果が地域全体へ波及し、大人の喫煙率は下がり、健康にも注意を払うようになった。

 こうした取り組みを日本でもできないかと考え、始めたのが子ども向けのがん教育。がん予防をテーマに子どもが大人を変えていく≠ニいう趣旨のDVDを2本作製し、昨年は北海道の22校の小学6年生、1430名に見てもらいました。視聴前、視聴後すぐ、視聴1ヵ月後の3回のアンケートを実施し、その結果を統計の専門家が分析。学習効果ありとの結果が出ました。今年度は他県でも実施を予定しています。

 子ども向けのがん教育の目的は、やはり早いうちから良い習慣を身につけてほしいから。今、平均寿命は延びていますが、健康寿命はほとんど延びていない。それを延ばすには、もう次の世代というより、次々世代への健康教育、これが大事なんじゃないかと思います。

 玄米酵素という会社が立派だと思うのは、ただ製品を売ることに専念するのではなく、普通の食生活が大事なのだという食育を同時進行で進めているところです。専門分野の方たちの学術研究で信頼性を固める一方で、全国で健康講座を開いて地道に食育、健康教育を進めていらっしゃるのがとても良いと思います。

Profile

小林 博(こばやし ひろし)
1927年札幌市生まれ。医学博士。1952年北海道大学医学部を卒業。その後、同医学部第1病理学に入局し、1957年に医学博士に。1959年7月から1961年3月まで米国国立がん研究所に留学。1966年に北海道大学教授に就任し、医学部がん研究施設長を3回歴任。現在は、同大学名誉教授。(公財)札幌がんセミナー理事長。「がんとの対話」「がんの予防」「がんに挑む がんに学ぶ」など著書多数。