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食改善を推奨する医師・医療従事者へのインタビュー

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医者のいらない社会へ。食を薬とし、体質を改善すれば病気は治る。

山口醫院 院長
山口 貴也 先生

医者のいらない社会へ。食を薬とし、体質を改善すれば病気は治る。

千葉県にある唯一の村、長生村。九十九里浜にもほど近い自然あふれる地に山口醫院は建つ。ここで、生活習慣の改善をメインに病気の治療や症状改善に当たっているのが、山口貴也先生だ。完全予約制の自由診療のクリニック。ホームページには「基本はご自身で治す」「受診したから治るや医者が治すと思っている方のご要望にはお応えできません」とある。さて、どんなお考えをお持ちか、どんな治療を行っているのか。山口先生にお話を伺った。

医者嫌いが高じて医者に、「医者は病気を治さない」と知る

記憶にある最初の医者との出会いは、子どもの頃、結膜炎と逆さまつ毛で眼科に行ったこと。待たされるし、目を開けさせられるし、嫌なことばかりされる。基本的に待たされるのが嫌いで、薬も注射も嫌いでした。母も医者があまり好きでなかったようです。物心ついた頃にはもう嫌いでした。

小学3、4年生頃に、叔父が持っていた電子手帳の占いをやったところ、将来の職業は「医者」と出た。それが医者という職業を意識した最初ですが、その後は医者になろうとは全く考えず、考古学者になるつもりで、大学は文学部への進学を考えていました。ところが、たまたまお医者さんと知り合い、病院ではない所で会っていると、医者も思ったほど悪い人ではないのかも…。それと、医者になれば自分が医者に行かなくてすむ(実は自分で自分に処方箋は書けないのですが)、病気の予防方法も分かるだろうと思い、医者を目指すことにしました。

医学部に入ると、2年生頃から病気のことを授業で学びます。それで分かったのが、医者は病気を治してないということ。簡単にいえば、治療法は「薬で症状を抑える」「手術で切除する」「放射線で焼く」、ほぼこの3パターンしかないのです。細菌感染症には、抗生剤があるので治せると思ったのですが、他の病気は治してない。医学部の授業で最も意外だったのが、この「病気を治さない」と「予防法は教えてくれない」ということでした。

大学では、勉強はあまり好きではなかったので講義室の一番後ろで将棋を指したり、人類学や哲学の本を読んだり…。勉強もテスト前の1、2週間するくらいで、とりあえず6年間で単位を取り終えて国家試験を通ること。それしか考えていませんでした。

根治を目指しさまざまな療法を学ぶ、治療のメインは食事と生活習慣改善

学生の時、最初、整形外科を目指そうと思っていました。実習でやった外科手術が大工仕事のようで面白かったからです。プレートを入れて叩いてネジで締める。引っ張って戻して固定する。怪我した箇所を手術や治療するのは悪いことではないと思ったからです。薬を使って根治のできない治療をするのは、ちょっとおかしいと思って…。ただ、手に震えがあり、手術ができなくなった時のことを考え、整形外科はやめました。そこで、精神科で精神療法をやろうと考えたのですが、メインの治療は薬物療法になっていて、精神療法では治療しても良くならないようでした。

何をやっていこうかと考えていた時に、知り合いの家庭医から家庭医はどうかと勧められました。家庭医とはプライマリ・ケアといって、全部の科を診る総合診療医です。ただ、家庭医も「ガイドラインに準じて治療しましょう」というもので、面白くないと思いやめました。

その後は、東洋医学(漢方・鍼灸)、西洋の伝統医学、ホメオパシー、栄養療法などの勉強会に行ったり、先生について学んだり、独学で勉強したりしました。その結果、病気を原因から治すことができるのは、食事と生活習慣の改善だという結論に至りました。そこで、自宅の一室を診療所として届け出て、往診専門で食事療法の指導を開始しました。普通の往診は一切やらず、食事指導だけです。患者さんはがんの方が多く、他は難病や治らないといわれた病気の方。病院に行っても良くならない方の所へ、紹介で往診に行くので、患者さんは最初からやる気のある方ばかり。食事療法をお話しすると納得されます。実際に効果はあったので、診療所を建てることにしました。ここ長生村に山口醫院を建てて8年になります。


山口醫院の外観。低温乾燥させた無垢材を使い、木組で建てたもので、安らぎを感じるフィトンチッド効果も。


待合室。椅子は一枚板を使用し、座っているだけで体調が良くなる方もいるという


看板はなし。ドア前の照明の下に診療所名が

食事の基本は植物性のホールフード、人が手を加え過ぎていない食品を

食事の基本となるのは、プラントベース(植物性)のホールフードです。野菜や果物、豆、穀物、種といった植物を精製しないで食べる食事です。ただ実際は、人によって良い食事は異なります。基本はベジタリアンの食事ですが、体質によっては肉を食べた方が体調のいい人もいます。食事指導の際は、問診や負荷試験を行い、体質を判断してその人に合った指導をしています。

今は加工食品が数多く出回り、果物なども品種改良のし過ぎで甘いものばかりになっています。家畜はもちろん、魚も養殖が大半に…。やはり、良い食事とは、”できるだけ人が手を加えていないものを、手をかけ過ぎずに食べる”。僕が講演の際によく行うのが、養殖の鯛と天然の鯛のお腹の内臓比べ。お腹を開けると、養殖の鯛は肥満で脂肪肝。天然の鯛は筋肉質で内臓脂肪がありません。では、どっちが食べたいかと問うと、皆さん天然の鯛が食べたいと言います。そうした元気な食べものをいただく、というのがやはり健康にいいのです。

僕自身は普段、玄米を食べていますが、浸水する時間がない時は精米して食べます。肉や魚は家では食べないようにしていますが、最近は魚を送ってくださる方が多く(さすがに僕に肉を送ってくる方はいません)、結構魚を食べることが増えました。普段は野菜がメインです。お米は麦やトウモロコシと比べると、たんぱく質の割合が多いので、大豆などの豆類とセットで食べていれば、必要なたんぱく質(アミノ酸)はとれます。野菜にもたんぱく質はあります。人と会食する時は肉を食べることもありますが、菜食でたんぱく質不足になることはないと思います。がんの患者さんや早く治したいという方には、一度ベジタリアンになってと言いますが、少し血糖値が高い、血圧が高いという方には、肉や魚を減らした方がいいが、ゼロにする必要はないとお話します。できることを見つけてあげて、そこから始めて、もしダメならまた考えればいいと思っています。

患者さんは口コミで来院、モルヒネに勝る音響振動療法

診療日は週に2日ですが、時間があれば他の日も対応しています。患者さんは都内やもっと遠く他県からの方が多く、ほとんどの方が口コミで来られています。

食べものに関しては、僕が医学部にいた20年前と今ではずいぶん変わってしまいました。ですから、今の食事はおかしい、もっと食事を大事に考えなくてはと思っている人は増えていると思います。それでも、病気を食事療法で治そうという人はまだ少ない。僕の診療所にそうした診療内容を理解せずに来てしまうと、お互いに不幸だと思うので、ここへはできるだけ口コミで来てほしいと思っています。

最近は健康志向のとても高い方も多く来られます。これも口コミです。病気はない、一般の健康診断では何も引っかからない、でも現状の自分の体がどうなっているのか、このまま病気にならずに生きていけるのか、診てほしい。そういう方の受診が今、非常に多いのです。そういう方には、指先から採取した少量の血液で血流の状態を見せたり、採血した血液を検査センターで分析してもらい、体内の炎症度合いや酸化度合い(酸化ストレス)、免疫のバランスなどを診てアドバイスします。


診察もバランスボールに座って


がんや難病の方の治療では、食事療法の他に、漢方やホメオパシー、温熱療法、放射線ホルミシス、音響振動療法などを患者さんに合わせ、必要に応じて行っています。どれも、薬や注射嫌いの僕が自分に使っても良いと思う療法です。

例えば、音響振動療法はヨーロッパで開発されたもので、日本ではまだですが、ヨーロッパではさまざまな疾患に適用されています。音を使って体に振動を与える機器で、頭痛に効く周波数、腰痛に効く周波数、血圧を下げる周波数などがあり、それを体に与えて揺らすわけですが、振動だけではブーンという音がするだけなので、そこに音楽を乗せています。この機器は200万円くらいするので、それなら作ろうと自作しました。半分趣味の世界です。音楽を作るための機器が多数あり、実際にプロの音楽家が来た時には驚かれました。この機器を患者さんに使うこともありますし、疲れた時は僕はそこに座り元気を取り戻しています。

症例はいろいろありますが、こんなケースもありました。余命1ヵ月というがん末期の患者さんが来られて、痛みが取れないから何とかしてほしいと。その方は、抗がん剤はやりたくない。モルヒネは使ってはみたが、眠くなったり体がだるくなるだけで、痛みは取れないから使いたくない。そこで、この機器を体に当てたところ、痛みが取れたのです。「先生、僕このまま逝っていい?人生の最後にこの痛みが取れて、本当に幸せだよ!」と喜んでいました。機器を作った甲斐がありました。

高血圧には薬も減塩も期待ほどの効果はなし

2023年3月に本を出しました。『薬・減塩に頼らない血圧の下げ方』という本で、最新の医学データを元に書いています。一般に血圧が高いと、脳梗塞や心筋梗塞の予防に薬を飲みましょう、と言われます。しかし、全員ではありませんが、ほとんどの方は薬を飲んでも予防できない、逆に食事を変えた方が予防できる、というデータが報告されています。減塩に関しても、あまり効果はありません。

今から70〜80年前、日本人は平均17gの塩分をとっていたとされています。ベトナムのデータですが、20g摂取している人ともっと少ない人を比較しても、血圧は変わらないという結果があります。それなら、日本人の17gは問題ないのではないかと調べてみると、地域によって差があり、26gの所、もっと高い所(東北地方)では50gもとっていたのです。これは明らかにとり過ぎです。しかし、今の日本人の摂取量が10g程度であれば、これが6gになっても死亡率は変わりませんし、下げると逆に死亡率が上がるというデータもあります。

やはり、食事を変えた方が効果は出ます。カリウムやマグネシウムの多い葉物野菜や果物、豆類を多くとれば、血管内の炎症や酸化を抑えてくれるので、心血管系の病気を減らすことができます。減塩よりも大事なのは、食習慣です。塩は質の良い天然塩を適量とる、いい野菜を買ってきて、いい調味料を選び、自分で調理する、これがおすすめです。

”何もし内科”と自称、医者のいらない社会へ

「人間は誰でも体の中に100人の名医を持っている」これはヒポクラテスの言葉ですが、僕もいつも患者さんには「あなたの体の中には治すためのお医者さんがいる。でもそのお医者さんが機能するためのスイッチを押す場所や押し方をあなたは知らないから、僕がそのサポートをします」と伝えています。そのサポートというのが食事療法だったり、時々鍼灸だったり…。しかし、基本的には僕は手を出さないようにしています。だから患者さんには、僕は”何もしない(内)科”の医者です、と。自分で何とかしたいという方には、いろいろな方法があることをお伝えできる。そうした「自分で治す」意志のある方に来ていただけるといい結果が得られると思います。

それと、僕は食事療法で慢性病は治ると確信していますが、食事で治ったという人をもっと増やしたい。増えれば、周りの人が自分もやってみようとなる。僕が以前教わっていた先生の本を読んで、自分で食事療法を行い、がんが治った方がいます。その方は、先生の所に受診に来て「治りました」と挨拶だけして帰ったそうです。そんな人が増えるといいと思います。この先は、食事療法やファスティングが行える場所を作りたいとも思っています。この診療所は、ここに来ると病気が治るような建物にしようと考えて建てたものですが、やはり良い環境の所に作りたいですね。

そして、これは究極の理想ですが、僕のような慢性病を治す医者が失業するような社会を作りたい。医者がいなくても、良い食事をして誰もが元気になる。そんな社会にしたいですね。

Profile



山口 貴也(やまぐち たかや)
1977年愛知県生まれ。2004年岩手医科大学医学部卒業。医療法人鉄蕉会亀田総合病院、茂原機能クリニック、医療法人蛍慈会菜の花クリニック、医療法人社団聖光会聖光会病院等に勤務した後、2014年に往診専門の山口医院を開院。2016年7月、山口醫院に名称変更し、現在の千葉県長生郡長生村にて、自由診療専門のクリニックとして診療に従事。

山口醫院ホームページ

■山口貴也先生の著書をご紹介

最新医学データが導き出した『薬・減塩に頼らない血圧の下げ方』
ユサブル 1,650円(税込)

薬と減塩では動脈硬化は防げない!世界中の論文や研究を元に、確かなエビデンスやデータを紹介しながら解説。高血圧と薬の関係や高血圧の真の原因、脳・心血管疾患の効果的な予防法など、有益な情報が満載です。
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